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https://news.yahoo.co.jp/articles/bf5fed564a205c02f7785090bcf1c81ac67470e3

規格外の栗で「霜降り」に　ブランド豚を育てる「一石三鳥」の挑戦

栗の栽培面積、出荷量ともに全国一の茨城県。なかでも代表的な産地である笠間市の栗でブランド豚を育てるプロジェクトが進んでいる。飼料価格が高騰する中、「ご当地餌」にはコスト抑制の期待がかかる。廃棄されてきた規格外の栗や加工で残った皮を活用できて、更においしい豚肉になれば「一石三鳥」だ。ただ乱立するブランド豚の世界では幻となった銘柄も。バラ色の未来が待つとは限らないようだ

　プロジェクトは一般社団法人「農林水産業みらい基金」の助成事業の一環として、鯉淵学園農業栄養専門学校（水戸市鯉淵町）が2022年から展開している。

　担当する小田野仁美さん（33）によると、笠間では傷みや虫食いがあるなどの規格外の栗が、年間少なくとも60トン廃棄されている。畑に残すと虫食いの原因になるが、回収しても保管場所に困る農家が多いという。廃棄料もかかる。

　そこで、小田野さんらが農家を回り、規格外の栗を回収。また、ペーストを加工する工場で1日当たり約100キロ出るという皮や残った中身を無償で譲り受けている。

　回収した栗は特注の粉砕機で細かくし、天日干しして乾燥させる。それをトウモロコシや米などの配合飼料に混ぜて、豚に与える。

　これまでの研究で、配合飼料に栗を8％加えると、粗脂肪の含有量が配合飼料だけの餌と比べてロースでは1％増えた。その分、サシの入った柔らかい「霜降り肉」になる。男女53人を対象とした検査では「ジューシーさ」も配合飼料だけで育てた豚を上回った。栗の配分を増やせば更に柔らかくジューシーになるのか、15％と50％にした場合の変化も豚の健康状態を観察しながら研究中だという。

　同校に豚舎がないため、近くの日本農業実践学園（同市内原町）に委託して10頭を飼育。24年末までに年間500頭を生産できる体制を目指している。小田野さんは「廃棄されていた栗が豚肉になってよみがえるという流れができたのがうれしい。いずれは地域の特産物にしていきたい」と意気込む。

　全国にブランド豚は400種類以上あるとされる。「銘柄豚肉ハンドブック2022」（食肉通信社）によると、笠間の栗のように地域の特産品や農産物、その未利用部分を餌にしたブランド豚も80以上ある。

　例えばビールの原料ホップの生産量が全国一の岩手県。なかでも有名な産地、遠野市には、同市のホップを使ったビール粕（かす）を飼料に加えた「遠野ホップ豚（とん）」がある。大手飼料メーカーの日清丸紅飼料が、市内の酒造会社で廃棄されていたビールの仕込み粕を乾燥させて配合飼料に混ぜている。同社によると、ポリフェノールを豊富に含むホップを使うことで、一般の豚と比べ鮮度が長持ちし、ドリップ（汁）が少なくなるという。

　香川県の畜産協会などは、収穫量が全国の約9割を占める特産のオリーブを活用。採油後の果実を乾燥させた「オリーブ飼料」を豚に与え、15年に「オリーブ豚（とん）」と「オリーブ夢豚」を誕生させた。配合飼料にオリーブ飼料を混ぜると、肉の果糖（フルクトース）が高まり、あっさりとした味わいになるという。

　ご当地餌を地域ブランドにつなげようとする生産者ら。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などで配合飼料価格の高止まりが続く中、新規参入も相次ぐ。茨城県では特産の干し芋の製造過程で捨てられる部分を飼料に生かそうとする動きも出ている。

　ただ、銘柄の知名度はまちまち。コスト減も一筋縄ではいかないという。

　香川県では、水分を多く含むオリーブの乾燥に費用がかかり、飼料にしても配合飼料の数倍の値になる。県内では以前、特産の讃岐うどんの乾麺を餌にする試みもあったが、麺に含まれる塩分の除去にコストがかかり、プロジェクトが終わった。畜産協会の担当者は「高くなった配合飼料の代わりというのは、なかなか難しいのではないか」と指摘する。