盲目の令嬢「…準備なさい」俺「は、はい!」

1 : 2024/09/01(日) 06:20:58.666 ID:uCSIVrUu0
令嬢「平民の猿を連れて歩かなければならなくなるなんて」ハァ

俺(なんで俺が、こんな目に……)

令嬢「うっ」ヨロッ

俺「し、失礼いたします!」バッ
俺「大丈夫でございますか!」

令嬢「……なぜ、石のある上を歩かせたのかしら?」ギロッ

俺「えっ、し、しかし、外ですし、そういうことも……」

令嬢「……」スッ

俺「て、鉄杖……?」

ガツッ、ドゴッ

俺「うぶっ!」
俺「お、お辞めください!」

令嬢「私は、公爵家の長女よ! 私の身体に傷でもつけたら、貴方はどう償うつもりだったのかしら!」ドゴッ、ドガッ
令嬢「貧民の老婆の手でも引いているつもりだったのかしら!」
令嬢「次やったら殺してやるわ!」

俺(こ、このままだと殺される……)ハァハァ

2 : 2024/09/01(日) 06:21:41.535 ID:O4JKlGii0
おま●こタッチしてみて
3 : 2024/09/01(日) 06:22:05.711 ID:njuCPk2u0
もう一回転ばせてみろ
4 : 2024/09/01(日) 06:22:48.161 ID:khyOpavk0
よぉ狙えるな
5 : 2024/09/01(日) 06:25:59.592 ID:uCSIVrUu0
俺(……貴族の料理はやっぱり豪華だな)

令嬢「…………」
令嬢「口許まで運んで頂戴」

俺「そ、それもですか」

令嬢「…………」イラッ

俺「い、いえ! なんでもありません!」

俺(……こんなことまでさせて、恥ずかしくないのか?)チャカチャカ
俺(こいつら平民を人間だと思ってないから、そういう感情はないのかもしれんな)

俺(お高く留まりやがって。今フォークで突いてやったら、殺せるのに……)

令嬢「早くしなさい!」

俺「はっ、はい! 何からとりましょうか!」

6 : 2024/09/01(日) 06:26:18.859 ID:uCSIVrUu0
令嬢「……取るのは遅いわ、間違えるわ、下に落とすわ」
令嬢「最低ね」ハァ

俺「……お粗末様でした」

令嬢「全部で八回だったわね」スッ

俺「え……れ、令嬢様?」

シュンッ、バンッ

俺「おぶっ! あがっ!」

7 : 2024/09/01(日) 06:26:37.474 ID:uCSIVrUu0
メイド「大丈夫ですか、俺さん? こんな、怪我だらけで……」

俺「気を遣ってくれてありがとうございます」
俺「これくらい平気ですよ」ハハハ

メイド「食事の時間以外令嬢様に付きっきりなのに、令嬢様の横暴で食事もまともに取れずに殴られっぱなしなんて……」

俺「……」

メイド「……大変でしょう。令嬢様は、サマエルと使用人の間で呼ばれているのですよ」

俺「それって、えっと……死の天使でしたっけ」

8 : 2024/09/01(日) 06:27:01.423 ID:uCSIVrUu0
メイド「そうです。サマエルは、その罪によってモーセに目を潰されたのですよ」クスッ

俺「……聞かれるとまずいですよ」

メイド「このくらい、皆口にしていますよ」
メイド「それに、あの性格ですから。親族も令嬢様を遠ざけていますし、咎めて騒ぐ人はいませんよ」

俺「そんなものですか……」

10 : 2024/09/01(日) 06:28:08.430 ID:uCSIVrUu0
メイド「あまりご一緒できる時間はありませんが……俺さんは丁寧で大人しくて、いい人ですね」ニコッ

俺「はは、あまり人馴れしていないだけですよ。田舎から出てきたもので」

メイド「またお時間合いましたら、お話しましょう」

俺「ええ、また……」

ドンッ、ドンッ

令嬢「遅い! 食事くらい、すぐに済ませなさい!」

俺「は、はい、すぐに!」

メイド「大変ですね」
メイド「妹様は、私達使用人にも優しく接してくださる、いいお方なのですが……」

俺「では、いつかまた」ドタドタ

11 : 2024/09/01(日) 06:28:33.277 ID:uCSIVrUu0
令嬢「呼べばすぐ来るのね」フンッ

俺「さ、さぼっていたわけではありません」
俺「その、急いできただけで……」

令嬢「…………」スッ

俺「ひっ!」

令嬢「……まぁ、よいわ。今回は見逃してあげる」

俺(た、助かった……)

12 : 2024/09/01(日) 06:28:53.948 ID:uCSIVrUu0
レスつかないな
朝早いからか
13 : 2024/09/01(日) 06:29:31.663 ID:khyOpavk0
しこってるからだよ間抜け
15 : 2024/09/01(日) 06:32:49.969 ID:uCSIVrUu0
令嬢「私は光を失ったけれど、その代わり、耳はとてもいいの」

俺「えっ……」

令嬢「つまらない嘘は吐かないことね」

俺「…………」ゾオッ

16 : 2024/09/01(日) 06:33:48.059 ID:uCSIVrUu0
令嬢「早く着替えさせて頂戴」

俺「……は、はい」ゴクッ
スルスル
俺(陰口でも天使と叩かれるだけのことはある……綺麗だ)

俺(人の手を借りないと生きていけないから割り切ってるのかもしれないが……それでも、普通男にはさせないだろ)
俺(本当……俺達平民のことなんて、道具としか見てないんだな)

俺(…………)ソオッ

令嬢「早くしなさい。56すわよ」

俺「ただっ、ただちに!」

17 : 2024/09/01(日) 06:34:05.228 ID:uCSIVrUu0
俺「……こ、この位置で大丈夫でしょうか?」ソッ

令嬢「本当に中央なのでしょうね」

俺「……少し動かしますね」

令嬢「………」チッ

俺「ひっ!」ビクッ

俺「これで、毛布を被せて……終わりました。今日もお疲れ様でございました」

令嬢「…………」

俺(ぺっ、労いの言葉もなしかよ)

18 : 2024/09/01(日) 06:34:53.543 ID:uCSIVrUu0
俺(これで六時間開放される……)フウ
俺(令嬢様が起きる一時間前から横にいろって、どう考えてもおかしいよなあ)ハァ

メイド「俺さん、お勤めごくろうさまです」ニコッ

俺「メ、メイドさん! どうも……」

メイド「実は、俺さんとお話をしたいとおっしゃっている方がいまして。来てもらえませんか?」

俺「そ、そうなんですか? しかし、睡眠時間がその……」ハハ

メイド「妹様です」

俺「え、えっ!?」

メイド「いつも、一時間早いのでしょう? そちらの件も、妹様から許可を出していただけるかと」

俺「わ、わかりました。しかし、なんで俺なんかを……」

19 : 2024/09/01(日) 06:35:07.709 ID:uCSIVrUu0
妹「ありがとう、メイドちゃん」ニコニコ

メイド「い、いえ!」

妹「お話するのは初めてですね。俺さん」

俺「あ、あの、なぜ、俺なんかを……」

妹「……愚姉がいつも、迷惑をかけております」ペコッ

俺「そ、そんな、とんでもないです!」
俺(め、めっちゃいい人だ! なんで令嬢様と姉妹なんだ?)

22 : 2024/09/01(日) 06:39:08.669 ID:7bZzNf+M0
妹ちゃんは爆発します
24 : 2024/09/01(日) 06:44:04.697 ID:cmGtXZdK0
定期的に貼られるよなこれ
25 : 2024/09/01(日) 06:47:07.108 ID:uCSIVrUu0
妹「私が起こしてしまったので、朝遅く出る許可を出したといえば、父も母も、姉も、余計なことは言えませんよ」

俺「ありがたいです……」

妹「本題なのですが……俺さんはとても真面目で、仕事のできる人です」
妹「ここまで文句も大きな問題ごともなく姉に仕えていられる方は、本当に少ないんです」

俺「過分な評価ですよ。……正直、俺もいつまで続けられるか自信がなくて」

妹「そうでしょう。私はそのような人が、姉の横暴で潰されるのを見たくはないのです」

俺「え……」

妹「庭師の仕事を増やして、空きを作って差し上げます。俺さんがそちらへ入れるよう、手配してあげましょう」

俺「ほっ、本当ですか!?」

26 : 2024/09/01(日) 06:47:20.081 ID:uCSIVrUu0
妹「今の仕事だと、まともに故郷にも帰れない上に、何の自由もありません」
妹「庭師の仕事も楽だとは言いませんが、今よりはきっとマシですよ。昼の食事も抜けられますし、お菓子の時間も設けております」
妹「夕食の頃にはその日の仕事はお終いです」

俺「め、女神様……!」

メイド「よかったですね、俺さん」ニコッ

妹「一週間ほど、どうにか堪えてください。その間に進めてみせます」

俺「ありがとうございます!」

27 : 2024/09/01(日) 06:47:37.654 ID:uCSIVrUu0
令嬢「……何を考えているの?」
令嬢「いつも、六時前にはここで待っているのではなくて?」イライラ

俺(こういう日に限って早起きなんだよなあ)ハァ

令嬢「抜けていたわけではないわね。五時にもいなかったもの」

俺(……ほ、本当、こういう日に限って)

俺「じ、実は他の使用人が倒れたらしくて、穴埋めに入っておりました」
俺「妹様より、許可はいただいております」

令嬢「……お前は」

俺「…………」

令嬢「お前は私の世話係なのに、妹の言うことを聞くのね」

俺(ば、バレてる!? いや、そんなはずは……)ドキッ

令嬢「早く連れて歩きなさい」

俺「はっ、はい!」

28 : 2024/09/01(日) 06:47:53.828 ID:uCSIVrUu0
―三日後の夜―
妹「明日には父に提案できそうです」ニコニコ

俺「ありがとうございます!」

メイド「よかったですね、俺さん!」

妹「これであの腐れ女と離れられて、さぞ嬉しいことでしょう」ニマァ

俺「……あ、姉なのでしょう? そこまで言わなくても……」

29 : 2024/09/01(日) 06:48:03.601 ID:uCSIVrUu0
妹「元々嫌いだったのですよ。目が見えなくなる前から、高慢で、我が儘で」
妹「その癖に天才肌で、美人で……散々甘やかされて、人の気持ちなど考えたこともないというような、そういう女でした」

俺「は、ははは……」

妹「私も姉の尻拭いをさせられ、その上に姉と比べられ、お前はダメだとよく言われたものです」

俺「…………」

妹「そうしたら……フフッ、目が見えなくなって、あのザマで……!」
妹「ずっと何かに怯えてるみたいに、周囲の物に必死に当たり散らして、ああ、お可愛いことで」フフッ

妹「元々捻じ曲がっていた性格が、ああも悪化するなんて!」
妹「そのうち、捻じ切れてしまうかもしれませんね。なんて」

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