瀬古利彦「スポーツを見て元気をもらったことがない、って人はいない。五輪が“心のワクチン”になれば」ねえけど

　８４年ロス、８８年ソウル五輪男子マラソン代表の瀬古利彦氏（６４）＝日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー＝が１３日、都内でスポーツ報知の単独取材に応じ、コロナ禍で懐疑論が根強い今夏の東京五輪への思いを明かした。瀬古氏は東西冷戦によるボイコットで、金メダルが本命視された８０年モスクワ五輪に参加できなかった。「走って負けたら悔いは残らないが、走らないで負けるのは悔いが残る。許されるなら五輪をやらせてあげたい」と、選手に心を寄せた。（取材・構成＝細野友司、太田涼）

　白血病を克服して代表権をつかんだ競泳女子の池江璃花子（２０）＝ルネサンス＝にＳＮＳで代表辞退を求めるメッセージが届いた。９日の陸上テスト大会では、国立競技場周辺で反対デモが「中止だ中止！」と叫ぶ声がこだました。「出たい」と言えない空気に、当時と似通ったものを感じる。

　瀬古氏「当時は『五輪に行かせてくれ』というのは、最後の最後で柔道の山下君たちが言いに行ったけど、それまでは言ったらいけない感じだった。今も同じですよ。『五輪やらせて』って言っちゃいけない雰囲気になっている。（４１年前の）“二の舞い”になるんじゃないか、って考えてしまう」

　感染対策と、海外から数万人が集う五輪開催。両立に国民の不安が拭えないから懐疑論が根強い。そのはざまで内定選手は苦しみつつも、五輪を信じ準備する。コロナ禍でスポーツの役割、そして社会に与える力は―。

　瀬古氏「選手たちは走るのが仕事。仕事を奪われることほどつらいことはないから、許されるなら五輪をやらせてあげたいと思うよね。今まで一度もスポーツを見て元気をもらったことがない、って人はなかなかいないんじゃないか。苦難を乗り越えて勇気づけるスポーツの力が、免疫力を上げる“心のワクチン”のようになればいい」

瀬古利彦氏　五輪やらせてって言っちゃいけない雰囲気　モスクワの二の舞いになるんじゃないか…独占インタビュー(スポーツ報知)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f6596c3d8fdb714a3a4286ccdfe2657d44244b5c?tokyo2020