日本キリスト教福音派牧師｢安倍晋三を殺した山上に同情の余地はない。ユダヤ人を殺したハマスも絶滅させるべき。｣

ユニバーサル福音教会牧師　吉田　宏

今イスラエルで、「主よ、わたしは深い淵からあなたに呼ばわる」から始まる聖書の詩篇１３０篇を朗読し、「その地を、いやす」で終わる歴代志第二7章14節の聖句を噛（か）みしめ、党派と教派を超えて一つとなって祈る「国家祈祷（きとう）日」が提唱されている。

　それは言うまでもなく、10月7日、現地時間午前6時半ごろ突如として勃発したパレスチナ・ガザのテロ組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃を受けてのことであり、イスラエルではこの大惨事を国家存亡の危機と認識しているという。

　この日ハマスは、ガザ地区からの５０００発以上のロケット弾攻撃を始め、同時に戦闘員が壁を超えてイスラエル側に侵入して多数の人々を無惨に殺傷した。ハマスによって惨殺されたイスラエル人は約１５００人、さらに２２０人以上の人々が人質として拉致されていった。まさに「イスラエルにとっての９・11」であり、ナチスのホロコースト以来、最大の犠牲者を出した大事件である。

　このハマスの攻撃に対しネタニヤフ首相が「われわれは戦争状態にある」とする声明を出して、「鉄の剣」と名付けた挙国一致の自衛とハマス殲滅（せんめつ）の作戦を開始し、ガザ地区にあるハマスの拠点に対して、連日激しい空爆を行い、地上戦にも突入した。民間人を人間の盾とする卑劣なハマスの作戦によって、現在ガザ地区では民間人を含む９０００人以上の犠牲者を出している。

ではハマスは何故（なぜ）イスラエルを奇襲したのか。一つはアラブ首長国連邦（ＵＡＥ）やバーレーンなどがイスラエルと国交を正常化させ、またサウジアラビアとの関係正常化が進んでいたことで、ハマス孤立の焦りが指摘されている。案の定、ハマスはテロによってガザに国際社会の目を向かせることに成功し、おまけに、「ハマスも悪いが、イスラエルはもっと悪い。ハマスにも一理ある」といったマスコミ報道や中東専門家のコメントにより、ハマスが美化され、悪夢の「反ユダヤ主義」が台頭している。

　これはちょうど、安倍晋三元首相を殺害したテロ事件において、「山上徹也被告も悪いが旧統一教会はもっと悪い。山上被告にも一理ある」といった筋違いの風潮が席巻し、マスコミのバッシングによって、「反統一教会思想」が煽（あお）られているのと瓜（うり）二つである。つまり、卑劣なテロを行ったのはハマスであり山上被告であるのに、そのテロ犯人が英雄視され、加害者と被害者が逆転する現象があるというのだ。如何（いか）なる理由があろうと、まず断罪されるべきは憎きテロであり、日本世論に見られる犯罪者美化の風潮は、まさに民主主義の否定で、全体主義を彷彿（ほうふつ）させる。

　確かにユダヤ人は、「選民主義」「キリスト殺し」のレッテルを貼られて辛酸の歴史を余儀なくされてきたが、世界に聖書を残し、一神教を教え、イエス・キリストを生み出したという人類史的貢献を無視してはならない。ノーベル賞受賞者もユダヤ人が20％を占めている。

　ともかくイスラエルは、「わたしはこの地をあなたの子孫に与える」（創世記15・18）と神がアブラハムに約束された地「カナン」（パレスチナ）に、ホロコーストという犠牲の末、やっと悲願の国を建てることができたのである。今回の事件で日本のマスコミは、爆撃によるガザ住民の悲惨さばかりを強調し、テロ集団ハマスの本質から目をそらそうとする傾向にあるが、筆者は前述してきた理由から、イスラエルを支持するとともに、パレスチナの地に恒久の平和が訪れることを心から祈りたい。

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