山上、自殺のついでに安倍を殺しただけだった。転職に何度も失敗し、多額の借金を抱え死ぬ寸前だった

Xの伯父によると、Xは海上自衛隊に所属していた2005年に自殺未遂を起こした[255]。生命保険の受取人を母親から自身に変えた上で[249]、旧統一教会への献金によって生活が困窮した兄と妹に、自身の死亡保険金を渡すことが目的だったとしている[255]。奈良市内の旧統一教会教会長（当時）は、広島で入院していたXを訪ね、「何でこのようなことしたのか」と尋ねると、「少しでも妹の生活の足しになるかと思って」と述べたという[249]。
この頃、Xの一家の窮状を知った教会長を窓口に、Xの親族側と旧統一教会側との献金の返金協議が開始され、Xもこの協議に参加していたとされる[249]。その後、旧統一教会側は2005年から2014年（平成26年）にかけて、計5,000万円を返金したとしているが[248]、親族によればその5,000万円も母親が再び献金したと説明した[256]。返金は月に30万から40万円ほど、現金による手渡しで行われたとされる[249]。
2005年頃、Xは一人暮らしを始め、アルバイトや派遣社員で生計を立てるようになったが、人間関係が良好にいかず、職を転々とした[249]。自衛官退官後から事件までの17年間の勤務先は10社以上で、人間関係で嫌気がさすと次の仕事が決まっていないのに退職する、ということを繰り返しており、無職期間は少なくとも通算約7年に及んだ[257]。退官後最初にした仕事は2006年（平成18年）12月に始めた測量会社のアルバイトであったが、翌年6月に退職[257]。その後の2年半は無職で、この間に測量士補、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーの資格を取得した[251][257]。
2009年（平成21年）には、母親が1998年に親族から経営を引き継いだ[258]建設会社が解散した[259]。Xは事件までの10年ほどは職場を移りつつ、派遣社員としてフォークリフトを使った仕事に従事していた[251]。闘病していたXの兄が2015年（平成27年）に自殺した[232][260][249]。
2020年10月には、大阪府内の人材派遣会社に登録し[251]、同月から京都府内の工場に派遣社員として勤務した[231]。この工場では当初は仕事を的確にこなし、評価も高かったが、2021年（令和3年）春頃からは職場の先輩や社外のトラックドライバーと口論するなどのトラブルも起こしていた[261]。一方で、職場の社長によれば「誰彼かまわず噛みつくタイプ」ではないとし、「フォークリフト操縦は衝突や破損事故が頻繁に起きるが、仕事を完璧にこなそうとするタイプの彼については事故報告が1件もなかった。そのため、同僚から意見されるとおまえに言われたくないと反発する。進学校を出ている彼の中には自分はこんなところで働く人間ではないという苛立ちが強くあったのでは」と語っていた[262]。

2022年4月半ば頃、Xは「体調が悪い」と言って職場（前述の派遣先の京都府内の工場）を欠勤するようになり、5月15日に依願退職[231][300]した。その後派遣先の大阪府内の会社で勤務していたが、6月上旬に退職し、それ以降は事件まで無職だった[257]。事件当時は消費者金融からの借入金など、少なくとも数十万円の負債を抱えていた[257]。

同年7月3日から自身のスマートフォンで、安倍の遊説日程を複数回閲覧。安倍の7月7日のスケジュールを見て[306][19]、このときXは初めて安倍の殺害を実行に移すことを決意した[272]。7日は（1）15時30分、西宮市、末松信介の街頭演説会→（2）16時45分、神戸市、末松信介の街頭演説会→（3）19時、岡山市、小野田紀美の個人演説会、の順番で3会場[18][307][308]を回ることが記されていた。7月6日、XはJR奈良駅の券売機で岡山駅行き新幹線の片道切符を購入した[306][309]。前職の退職により、「金がなくなり、7月中には死ぬことになると思った」「その前に安倍氏を襲うと決めた」と供述している[310]。

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信念の人

マンデラガンジー空海山上